第41話 ゴールとスタート

『さあ、一区先頭集団が中継所のカメラに映ります! 区間記録まであと二十秒!』

 流しっぱなしのスマホの中継が、新しい始まりを告げる。

 カウントダウンにわくわくする彼女は、手元でこそこそ何かやっているようだった。

 ややあって小さな笑みを見せると、手のひら大の紙を広げて顔の横に並べた。


『大吉』


 小さく、だけど自慢げに掲げられたそのおみくじは、きっと嘘はつかないと思った。

 やってやったと言わんばかりに、少女は紙のうしろからお守りを登場させる。おみくじのセットらしい。まったく、この子はどこまで負けず嫌いなのだろう。それは神籤であると同時に、挑戦状だった。

 ケン、君はいつも正しかったよ。でも今ならひとつだけ、明確な間違いを指摘することができる。完全に見積もり不足だったね。

 これが、コストに見合わないだって? 君にしては珍しい大失態だ!

 ケンみたいにたくさんの願いを叶えに行くことはできない。でも、願わくばこのおみくじを叶えに行くことだけは。

 どうか神様、大目に見てくれたりしませんか。

 まあ、あなた様になんと言われようと「受け手次第」なんだけどね!


「あけましておめでとう、ツネくん」


 その笑顔、プライスレス。

 二回目の福笑いには、成功したみたいだった。

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こんがり化けたモノクローム つじは @tsujihaneta

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