ママの牢屋の中で子どもは本当の心がわからなくなってゆく

自分の考えを押しつけて、子どもを理想の「いい子」にしようとするママ。
ママの顔色をうかがい、子どもの悲しみ、苦しみには無頓着なパパ。
六歳の女の子は、己の生殺与奪の権を握る親の前で、本心を口にすることも許されず、「いい子」という牢獄に囚われてしまっています。
暴力を奮うわけでなくとも、罵詈雑言を浴びせるわけではなくとも、それは「虐待」に他なりません。

「どうやっても大人には勝てないから理不尽も飲みこむしかない」「心と裏腹のことを言ってでも相手の機嫌を取る」
自分も子どもの頃は、こんな苦しい思いをした記憶がよみがえりました。もちろん大人の方も、子どもの私に手を焼かされたことも多々あったでしょうが。
子どもの心って意外と自由じゃなかったなあ、というほんのりと切ない感懐を抱きました。

心情の描写が細やかでリアルで、多くの方がこの物語の主人公に自分のかけらを見出すのではないでしょうか。
そんな囚われの女の子のたったひとつの光は……ぜひ本文を読んで確かめてみてください。