7冊目

 家に帰り、いざ今日の復習をしようとしても、なんとなく集中できない。

 気持ちが乗らないまま勉強したって結果は出ない。鞄から冊子を取り出し、秋晴のメッセージを読み返した。


 小説が持つ力。些細な、気づかないような変化でも。

 秋晴はきっと、この学校に転校するまでいじめっ子の近くで耐えていたのだろう。その時、『ドキワク☆転校新生活』を読んで、共通の趣味を持っていると思った私に話しかけて。

 こうやって丁寧に伝えてくれたのも、あの本があったから。


 .....嗚呼、やっぱり物語に力がある。



 翌日、夕焼けに包まれているバス。

 絶対あなたも号泣する、そんな文言が印刷されている物語の下のスカートに、そっと涙を落とした。




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感情移入しない小説の読み方~小説の力~ 幸野曇 @sachino_kumori

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