2019年7月21日 日本三景の日

7月21日、土曜日。


「きょ、今日は海の日ね」


「お、おう。それっぽい始まり方してるな。そうだな、ガキンチョたちの夏休みスタートだな」


 衣玖いくはそれっぽい日めくり更新を始めて、留音るねはびくっとしながら寄り添う方針を取っている。


「る、ルーは夏休みの思い出、何かある?あったら教えて。な、なかったら別にいいけど……」


 衣玖いくの発言は始める前と同様、緊張なのか震えていて弱々しい。


「お前そのテンションで大丈夫か?……うーん、やっぱり宿題?多いよなぁ夏休みって」


 留音るねは初日からコケるわけにはいかないという気持ちで話題に乗っかった。


「そ、そうね……一般的にはそういう感じよね」


「色々あったじゃん。読書感想文とか、ドリル何個も終わらせないとだめだったりさ」


「……そうね……」


 だが留音るねの健闘も振るわず、衣玖いくは話になかなか乗ってこない。


「え、ちょっとまって?1日目から話題広げらんないの?大丈夫この感じ?」


「やっぱり修羅の道だわ……」


「ったく仕方ねぇな……じゃああたしが広げるけど……あたしさ、夏休みの工作で賞取った事あるんだよ。夏休み明けに提出したのがどっかのコンクールで入賞しちゃって」


「へぇ……」


「でさ、それうちのママが作ってくれたやつだったんだよな。あたしなんもしてないの。ちょっと焦ったって思い出は未だにあるんだよなぁ。子供の発想じゃ無い工作だったんだけど取っちゃってさ。いやーあん時はまいったよ」


「ありがちよ、つまんない」


「おい!お前が全然広げらんねぇからあたしが身を削ってあの夏のちょっと苦い思い出をカミングアウトしてやったのになんだそれ!」


「ちょっと緊張してるだけよ!それにありがちなのは事実だし!そんな報告ネットにゴロゴロ転がってるわよ!」


「おい衣玖!初っ端からこんな感じでいいのかよ!!もうグダグダになってんじゃねーか!地の文どこいったんだ地の文!!ただの会話形式で済ませる気満々じゃねぇか!!その方向で行くなら初見さんに優しく誰が喋ってるかわかるようにしろよ!」


衣玖いく「あー!メタ発言したー!マイナス1点!!!読者の困惑を招きますー!ルー減点!!罰として明日はルーが一人でやってよね!!」


留音るね「お前初っ端から放り投げる宣言してんじゃねぇよ!お前もやるんだよ!!」


 7月21日、終わり?


 7月21日、やり直し。


登場人物:西香さいか


「はぁ。まったく、おさるさん共が何か騒いでますわね」


「いいですか、皆さん。本日は日本三景の日ですわ。日本の素晴らしい名勝地を示した林鵞峰さんという方の誕生日ですの」


「日本三景、つまり素晴らしい景色、あなたはなにかご存知ですか?」


「一般的には松島や厳島、天橋立と言われています。でもこれらをそれぞれ見に行くなんて簡単に出来ませんわよね」


「でも大丈夫ですわ。新たに制定された日本三景がありますの。きっと林さんも納得する三景とはそう……。このわたくし、西香さいかですわ!」


「わたくしのお顔。この美しく艷やかな髪の毛、そして細くくびれた腰、スラリと伸びた足、それに……。あら、見どころ多すぎて三景どころじゃありませんわね」


「え?見られない?そうですわね。恐れ多くてなのかわかりませんが、誰もファンアートなんて書いてくれませんもの。作者が友人を脅して書かせたクソみたいな絵は含めませんわよ。ですから、あなたの想定する一番の美少女を思い描いてくださいまし。それを心の目で見るんですの」


「それがわたくし。そこに日本三景の全てが詰まっています。……どうですか?見えましたか?」


「では、わたくしを視姦したので罰金を払っていただきます。振込用の口座は近々用意しますので、しっかり払うんですのよ。出来ないと言うならせめてわたくしが喜ぶことを察して行うこと。ためになったんですから、良いですわね?」|

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