季節は移ろいゆくけれど、作品への情熱は変わらない

「自分は最後まで隅々読んで、作中の人間関係から、作品のテーマや作者が読者に楽しんでもらうために考えた仕組み、作品の裏側にある哲学まで味わうようにしている。良書というものは、読み込むたびに新しい発見がある」

これは、本作を手がけた鷹仁氏のTwitter上での言葉だ。

「読書家として模範的な解答だ」と言う人もいれば、「そんなにじっくり読んでいる暇はない。1回読んだらもう充分だ」という人もいるだろう。
毎日、学業や仕事に追われ、新しいものを求めてあくせくする気ぜわしい現代社会では、そうした否定的な意見が挙がっても仕方ないかもしれない。

私は、しかし彼の言葉を支持したい。

支持するなどというのは偉そうに聞こえるかもしれないが、つまりは共感し、また尊敬の念を抱いているという意味だ。

良い作品には、何度味わっても味わい尽くせない魅力が溢れている。
作品に詰まった魅力という名の果実を、余すことなく吸い尽くす。ひいては、作者でさえも気付いていないメッセージや伏線を咀嚼してしまうのか。嗚呼、何とロマンティックな行為ではないか!

読書というのはたくさんの作品にふれ、感じ方や考え方の幅を広げていくというのも大切に違いないが、「ひとつの作品を深く深く読み込む」というのもまた同じくらい意義のあることで、人生を豊かにしてくれる行為だと私は思う。

本作『鷹仁 1st アルバム(歌詞置き場)【仁恋し~ひとこいし~】』は、そんな彼の深みのある読書観が垣間見える内容と言える。

track1はオリジナル詞であるが、その他3作はすべて他者の作品に関する歌詞(ファンアート)だ。
track3の原作『半笑いの情熱』の作者である私は、この歌詞を読んでほとんど感泣した。いったいどうしたら、これほど作品に寄り添った言葉を紡ぎ出せるのだろう。これほど作品に込められたメッセージを体現する歌詞を書けるのだろう。

彼の日ごろの真摯な読書スタイルがなければ、おそらくこれらの歌詞は誕生しなかっただろう。作者はもしかしたら好きでそうしているだけで、努力というつもりはあまりないかもしれない。
しかし、本作は間違いなく"鷹仁氏の努力の結晶"であり、"鷹仁氏の魂そのもの"だ。それだけは断言できる。

元となった作品にふれていない人には、歌詞の魅力が伝わりにくいかもしれない。
しかし、4作の歌詞はいずれも、現在(いま)を生きる人々への応援歌としての側面があると思う。ぜひ、その世界観にふれてみて欲しい。