魔女の手記

　暗く寂しい森の入口に、夜風の吹き荒れる屋上に、固く閉ざされた一室に、彼女は現れた。
　白い髪を揺らし、緑の瞳を細め、揺らぐことのない信念を抱え、この世の全てを愛した人外の少女は、悩み、苦しみ、諦めた少年たちに言葉をかける。

「だって、私は君のことが好きだもの」

「どうしてそんなに自分を卑下するの」

「世界の悪いところだけを知って、全てを分かった気にならないで」

　一見厳しいようでこの世の何よりも優しい言葉を吐く魔女と、人生を諦めた少年と、盲目的な少女と、独りぼっちの青年の物語。
　これは、終わりの物語でも始まりの物語でもない。
　永い永い命を与えられた少女の、幾つもの出会いと三つの別れの物語だ。

2021年2月20日追記
累計PV100超えありがとうございます。