作中の社会には『ミスマッチングアプリ』なる相手との相性を表示する機能が登場します。この機能は「ミスマッチ率」が表示され、相手との相性の悪さも表示されるものです。正直、ここまでは大して物珍しい設定ではありません。しかし、冒頭のたった三行に非常に興味深い内容が書いてあることで、汎用性の高いよくある設定が大きく化けたと……結果的には思っています。掴みが完璧だと思います。
少し内容に触れてしまいますが、まずメインである二人の男女は、例のアプリによると相性が最悪です。これについては文面を追っていても、ことごとく合わないことが分かります。ですが同時に恋愛は……少なくとも作中の二人にとっての恋愛はそういうことじゃないんだなとも思わされます。文面に書いてある合わない箇所なんて、二人の気持ちを前にすれば大したことじゃないのです。
現実において、恋愛は様々なカタチをもって人々の生活に寄りそっています。つまり、答えもなければ結果論でしか成りえないものがほとんどです。そんな曖昧なテーマを扱った本作も例に漏れず、数ある恋愛のほんの一端を垣間見ることができるものです。すれ違いと歩み寄りを繰り返す様子、アプリにより単純化されたはずの男女の関係が上手くいかない様子。読者の頭に残る二人のミスマッチング率。そしてラストまでの展開。全てがドラマチックで感動できるものでした。
また、起承転結がとても上手く、筋書きの流れが本当にキレイです。それと、本質としては社会の変化というより、恋愛のカタチに焦点を当てた作品だと思っています。
私も作中の恋愛について少し考えてみましたが、仮にマッチング率が100%だった場合、それはもう恋人ではなく親友になれる相手だと思います。必ずしも同じ方を向くことが恋愛の良さとは限りませんね。ただはっきりと言えることは、背中を押してくれるのは同じ方を向いている人だけです。背中合わせでは互いに押せませんから。
恋愛だけでなく、人間関係に対して前向きになれる素晴らしい小説です。
この作品と出会ったのは1月です、
この作品を初めて読んだとき、1万文字にも満たないこの作品に私は感情を激しく揺さぶられました。
当時、この作品の良さをほかの人にも知って欲しいと思って、レビューを書こうと思ったのですが、この作品を読んでの感動を言葉にして表現することができませんでした。
このレビューを拙いながらでも書こうと向き合えるようになるまでに4ヶ月も過ぎてしまいました。前置きが長くなってしまいましたが、この作品の魅力について紹介をさせていただきます。
登場人物について、
この作品では登場人物の性格や人柄を、表情や言動という要素表現をされています。直接○○のような人だ。という刷り込みの描写が無いので、作品を読んでいるうちにどんな人物なのかが分かるという表現なので終盤の感情移入もかなりのものでした。
進行 構成について
訪れる場所、会話どの要素を切り取っても作品を引き立てる要素となる意味を持った無駄のない文章となっています。
世界感について
この作品のテーマの一つである『ミスマッチングアプリ 』このアプリがどういうもので、どのような社会になっているのかという説明が説明パートは数行しかないにも関わらず、話の進行を理解するにあたっては十分というとてもコンパクトに収められています。
この作品の印象として読まれるということを意識し、読みやすく、分かりやすい。しかしながら、表現できる最大限をぶつけて読者を感動させるという意思を感じるとても素晴らしい作品でした。
自分が良いと思う作品という考えに大きな影響を与えた多くの人に読んで欲しい作品です。
誇大表現ではありません、過去読んだ作品の中で一番心が揺さぶられた作品でした。
名探偵コナンの作者として有名な青山先生のデビュー作に『ちょっとまってて』という漫画があります。
この作品の中では2才差のカップルが歳の差を解消するために、年下の彼氏の方がタイムスリップしようとするのですが、年上の彼女が出来心で装置をつけてしまい、そのまま2年が経過。
彼女の存在を忘れかけていた彼氏は3年生になって、「自分を彼女にして!」という後輩が代わりにいる始末。それでも最後は彼女のことを思い出して、後輩は去ってしまうのですがそれとは違ってこの作品では後輩のような存在のお見合い相手が、別れた恋人を応援しています。
タイムスリップ物と比較してしまうのはお門違いですが、機械とコンピューターという面でよく似ていると思いました。
彼女と考え方が違っても、一度別れてもまた巡り合うのがコナンであり、この作品でもあると思っています。
作者様を傷つけてしまったら申し訳ありません。
ミスマッチアプリ。相性のいい人間を探るマッチングアプリの逆バージョン。自分と相手の相性の悪さがパーセンテージで表すことができる。そのなかでも稀有なパターン、ミスマッチ率100%の女性と出会う。彼女は雨宮翔子。興味深い数字を叩き出した彼女と会わない理由がなかった。
人間関係は数値で測れるものなのか。ミスマッチ率の高い人間は排斥すればいい。そう作中で述べられていますが、主人公と翔子の関係がひとつのアンサーなのだと思います。まったく合わない人間とはいかなるものか。好きなものを嫌い、嫌いなものを好む二人。価値観や意見の相違は目に見えていて、すれ違うこともあると思います。合わないから排斥するのではなく、そこから二人が何を感じ、相手と関わり、関係を築いていくか。その紆余曲折ある過程に胸を衝かれます。
マッチング率:0%
ミスマッチング率:100%
相性をはじき出すアプリに、主人公とヒロインはこんな結果を提示されてしまいます。
アナタならこんな相手と付き合ってみたりしますか?
主人公も迷いますが、合ってみて彼女に魅かれ付き合うことに……
果たして、ミスマッチング率:100%とアプリが言わしめたこのカップルは、幸せになれるのでしょうか!?
主人公がアプリの結果とヒロインとの間で、気持ちを揺らす姿に共感しました。
ここまで極端な結果、気持ちが揺らいで当然だと思います。
主人公の心の変化を追っていくのが、とっても面白かったです!
人間は不思議なもので、自分の価値観や生き方に沿って適応していくものなのに、嫌いなものや嫌われているものが変に気になったりします。この作品の中で語られるマッチング率は、そんなものを回避する力があるでしょう。そんななか、ミスマッチング率100パーセントという奇跡的な相性の悪さをした相手を発見!ある意味ここで興味を持ったのが凄いですね(笑)
人間は当然、異なる趣味や世界観を持っています。二人の間に生じるミスマッチはなぜか、不和よりも互いを尊重している時のほうが印象的に映り、意見し合う方がより人間らしいと思えました。
物語の中でリアルと創作が高いレベルで表現されていました!この作品に出会えて良かったです!
ぜひとも多くの方に知って欲しいですね!
凄い、いや凄かった。
そんな感想しか出てこないけど、本当に圧倒されたんだもの。
凄いって言うしかない。
「ミスマッチングアプリ」と言うアプリによって、その人との相性が、「マッチング率」と「ミスマッチング率」が出るようになった、そんな世界。
そんなものがあれば、恋愛は簡単になるだろう、失恋なんてしなくていい。なんて思いながら、最初は読んでいました。
人は好奇心を持つ生き物なので、「ミスマッチング率100%」の異性がいたら、興味を持ってしまうもの。主人公のとった最初のとった行動も、自然な流れでした。
そうして、「ミスマッチング率100%」のお相手、雨宮翔子と出会い、関係を深めて行きます。
物語がテンポよく進むので、スクロールする手は止まらないです。
一万字ある物語なのに、全く苦にならずに、いつの間にか読み終えています。
短編とは思えないほどの満足感がそこにあります。
是非一読して、愛を噛み締めてほしいです。