空孤島の想い人
ツネダ団子
第1話 二人の世界
俺はただただ、行き交う雲を見ていた。
何をするわけでもない。座って眠気眼に時間を持て余す。足を宙に浮かせぶらぶらと降る。なんの退屈しのぎを飽きるまでやろうと決めたが、そろそろ限界が来た。
後ろを振り返ると、木が立っている。首を傾けると、木の向こう側で女が眠たそうに膝を頬の支えにして眠っているのが見えた。
お互いに何か干渉するわけではない、ただただ何もしない時間だけが過ぎていく。
「なぁ」
ひとつ声を掛けてみた。眠たそうな女はうっすらと目を開ける。
「なに?」
大層面倒そうに答える彼女は溜息をつく。話しかけないでと言いたいのかこちらに目も向けない。
「暇だから何かしないか?」
「こっちに来たら突き落とすわ」
「それは、困るなぁ」
こっちとは、木から横にちょうど半分になるように引かれた線の事だ。俺も女も相手の領域には入らないという約束をしていた。男女という事もあり自然とそんな約束が出来たのだ。どれだけの時間、この孤島で過ごしてきたか分からないが、絶対に守ってきた。
俺たちが居るのは、お互いに何かつぶやけば相手に聞こえるほどに、小さな島だった。だからといって突き落とされるのも困る。落とされれば真っ逆さまに海へと落ちていくだろう。何故ならここは、空に浮かぶ島なのだから。
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