第5話 変わらぬ日々

 一度、目を閉じれば草がカサカサと話す声が聞こえてくる。こんな風に感じることを前は楽しんでいたなと懐かしく思った。

 ふいに彼女は起こそうかと思った。寝ているのに起こすのも可哀想だと思ったが、やはり、何か話したいと思った。

 うんうんと悩んでいるこの時間も楽しい。突然、彼女がクスクスと笑い始めた。寝ていたのではないかと驚いた。彼女は笑い終わるとまた寝る振りを続けた。

「起きているだろ」

「……」

「いつから起きていた」

 また、クスクスと笑い始める女にため息をついた。俺も笑いが込み上げてきた。彼女は俺が悩んでいるのを見ていたと思うとおかしかった。

 笑う俺たちに合わせて木がザワザワと鳴った。

 酷いな、皆して笑うなよ。俺は笑いながら思った。

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