第2話 なにもしなくて良いじゃない

 温かい……、心地いい日差しが全身を包み意識が外へと漏れ出そうになる。風が吹くたびに草が揺れ、さらさらと肌を撫でる。瞼を上げると、日の強い光で頭が痛くなった。段々と時間の感覚が長くなってゆく。ほんの少し横になっただけでも日が一周するほどだった。

「なぁ、何かしないか?」

 女を見ると、この前と同じ格好で眠り続けていた。目を開けるわけでもなく、そこにあり続ける姿は白い肌と相まって美しい彫刻の様だった。

「暇じゃないか?」

 何故か喉も渇かず、腹も空かない。そんな島の上では退屈だけが難儀だった。雲を見続け、風の動きを感じようと、もはや退屈しのぎにはならない。

 女と会話をしたり、何か一緒に出来たらどれだけ楽しいかと考えると、暇が苦痛で仕方なかった。しかし、そう思っているのは俺だけかもしれない。女は、動かず眠り続けているのだから。

「別に何もしなくて良いじゃない。時間は沢山あるんだから……」

「そう……、だな」

 確かに、時間は沢山ある。なにも急がなくても良いだろう。二人で出来ることも、もうしかしたらすぐに飽きが来るかもしれない。二人で遊んでいる姿を思い浮かべる。今は、なにもしないということを一緒にやろうと思った。

 随分、気長だな。こんな性格だっただろうかと考えたが、思い出すにはあまりにも時間が経ち過ぎていた。

 突然、睡魔が襲ってきた。瞼が重くなってゆく。心地よい風の音を子守歌に意識を落とした。

 あぁ、明日は何をしようかな……。

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