第14話 二人の楽園 みんなの楽園
彼女は、俺たちが引いた島の境界線に立ち、手を差し伸べた。
「最後は、きっとこうなるとは思っていた。それは、怖かったけど、皆に励まされてるんだね……」
「あぁ」
手を取って、立ち上がる。境界線を跨いで、手を繋ぎ、二人で後ろを振り返った。
「みんな。ありがとうっ!」
後ろにふらっと体勢崩した。孤島から足が離れる瞬間、手をぎゅっと握られた。
やはり、怖いのだろうか。俺も少し怖いよ。
いつかは、こうなると思っていた。全てのことをやりつくすか、はたまた事故で落ちてしまうか。この孤島自体が落ちるか。結局は、海へ落ちるのだ。永遠に、ここに居るなんて無理なことなのだ。
ならば、久遠に怯えるよりも自ら最後へと堂々と進む。それが、彼女たちが教えてくれた事だった。
孤島が段々と離れ小さくなってゆく。
俺たちは、あんなに小さな島に居たんだな。それでも、これまでの時間やることが無くなることはなかった。もっと広い場所に居ても、俺には勿体ないものだったのかもしれない。
孤島から目を離し、彼女を見た。
「なぁ」
すぐに返事は帰ってこなかった。
「なに?」
「たぶん、俺一人じゃ落ちれなかったかもしれない」
彼女は、やはりすぐに返事をしなかった。上を向いた。
「そっか。私も」
彼女と固く手を握った。
心の中で、ありがとうと伝えた。なぜ、あの孤島で二人でいたのか。一人で気づけないことを教えあい、二人で越えられるようにだったのかもしれない。目を閉じると、孤島で見た景色が浮かんできた。体をなぞる風、喋りあう草、漂う温和な雲、見守ってくれた木。いろいろ付き合ってくれてありがとう。
目を閉じる。水しぶきが上がった。
広大な海に一つの波紋が広がった。そして、静かに消えた。
空孤島の想い人 ツネダ団子 @benizuki
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