第13話 美しき者たちからの贈り物
あれから、どれほどの時間が過ぎたのだろうか。長いか短いか分からなかった。明るい日が射し込んできた。嵐の傷を癒すかのように包み込む日の暖かさに目を閉じる。まるでここに来た頃に戻った気がした。風の流れを、草の声を、日の暖かさを全身で感じていた。懐かしさを覚えたが、すぐに彼女のことが気になった。
地面を見て時折、静かに涙を流す彼女を何とか励まそうと考えていた。
初めての頃のように、寝転がった。その景色に目を見開いた。
「なあ、そんな下ばかり見ていないで上を見ないか?」
俺は、上を指さして続けた。
「あざ、上だ。今から贈り物が来る」
彼女は、意味が分からいというように首を傾げた。そしてゆっくりと上を向く。
きっと、はじめに島と空へとの境界線が目に入るだろう。本当は小さいこの場所がとても大きな場所に見える。
次は雲だ。柔らかで温和な彼らはいつも風に流されながらもゆっくりと静かに俺たちを見守っている。
そして、空。どこまでも青い空が包んでいる。これほど美しい空を見ないのは勿体ない。
暫し、彼女は呆けていた。なぜだろうか。空というものは久しぶりに見ると、すっと体を持ち上げ透いてくれる気持ちよさがある。
「ありがとう。とても美しい贈り物……」
「いや、まだこれからだ」
そういうと、髪を揺らす程度だった風が強く吹いた。青い空に様々な色が乗ったのだ。散っていった花びらが空へと舞った。美しくあれるよう、最後の時を花びらたちは嬉しそうに大空を駆け回った。
「彼女達だって、過去を悔んだりしてないさ。常に未来に希望を持っている」
遊び疲れたのか、花びらたちはパラパラと島の外へと落ちていく。それもまた、花の雨のように見えた。どこまでも美しい彼女達にありがとうと心の中で伝えた。
彼女は、口元を抑え何度も頷いていた。目元からは緩やかな涙を流していた。
彼女を励まそうとみんなが協力してくれた。嬉しそうに木がざわざわと揺れた。花びらだけにではない。皆に向けてありがとうと呟いた。
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