季節華やぐ寂寥感ある文脈と、切なく囀る行間

 泣きました。もう、ラストの一頁で泣きました。

 冒頭は、青春を模る恋愛ストーリーだと思いました。状況描写と心理描写が巧みで、引き込まれるように活字の世界に首ったけに。溢れる薫りと、美しい世界、聞こえる雑踏と声、それにまるでそこにあるかのように、キャラクターが生き生きと。

 なぜ彼は一日一回嘘を吐くのか。初めは矛盾しているようにも思えて、逆にその違和感に引き込まれてしまいました。相思相愛という状況において、なぜ敢えて嫌われるような行動を彼がするのか、と。

 徐々に解き明かされるカラクリに、思わず感嘆の声を上げてしまいました。

 本当に好きだったのですね。愛という言葉で締めくくるのは、いかんせん、忍びないのですが、彼の愛情に深く心で泣きました。

 彼女の心情を考えれば、ラストのシーンに涙するのは当然だと思います。

 移り行く秋の寂寥感が、一層世界を彩るような、そんなラストにも感動しました。

 とても、素敵な物語でした。

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