泣きました。もう、ラストの一頁で泣きました。
冒頭は、青春を模る恋愛ストーリーだと思いました。状況描写と心理描写が巧みで、引き込まれるように活字の世界に首ったけに。溢れる薫りと、美しい世界、聞こえる雑踏と声、それにまるでそこにあるかのように、キャラクターが生き生きと。
なぜ彼は一日一回嘘を吐くのか。初めは矛盾しているようにも思えて、逆にその違和感に引き込まれてしまいました。相思相愛という状況において、なぜ敢えて嫌われるような行動を彼がするのか、と。
徐々に解き明かされるカラクリに、思わず感嘆の声を上げてしまいました。
本当に好きだったのですね。愛という言葉で締めくくるのは、いかんせん、忍びないのですが、彼の愛情に深く心で泣きました。
彼女の心情を考えれば、ラストのシーンに涙するのは当然だと思います。
移り行く秋の寂寥感が、一層世界を彩るような、そんなラストにも感動しました。
とても、素敵な物語でした。
小学生の頃、友達の夏彦から苦手なタイプを聞かれた秋葉が答えたのは、嘘をつく人。
するとそれを聞いた夏彦が言った意外な言葉。
「それなら明日から、一日一回、秋葉に嘘をつく」
夏彦は決して、秋葉に嫌われたいわけではありません。むしろ大好きと言ってもいいくらい。
では何故わざわざこんな事をするのか。それがこの物語の肝となってきます。
そして時が過ぎて、高校生になった二人。あの日以来、嘘をつき続けている夏彦と、そんな夏彦に淡い想いを抱く秋葉。だけとも二人の距離は、だんだんと開いていきます。
なぜ毎日嘘をつくのかと言う謎も見所ですけど、もうひとつ、キャラクターの心理描写も、この作品の大きな魅力。互いに惹かれあっているのに、心の距離に悩み、苦悩する二人の切ない気持ちが、痛いくらいに伝わってきました。
はたして嘘で繋がれた二人の関係の行く先は?
少し不思議で、切ない青春小説です。
「嘘」とは、一体どういう意味があると思いますか?
ついていい嘘、ついてはいけない嘘。
種類も様々で、物語には決して必要不可欠なものでもあると私は思います。
主人公である男の子、夏彦。
もう一人の主人公の女の子、秋葉。
夏彦は、ある日こんな約束をする。
一日一回、秋葉に対して「嘘」をつくという決まりごと。
秋葉は嘘は嫌いだが、当然何故夏彦が「嘘」をつくのか疑問だったが、その決まりが何年か続くのですが、その嘘はとても、とても……な嘘だったのです。
真実を見たとき、あなたは「もし、自分ならどうするだろう?」と、考えることになるかもしれません。
優しくて、想いが溢れて、秋葉に対する夏彦の想いがとても繊細に描いている作品です!