戦うしかないのであれば、せめて友として

 人と魔獣が争う世界、治安維持組織ガードの日本支部メンバーは人を喰らう魔獣相手に日々死闘を繰り広げていた。知性と理性、そして感情も併せ持つ魔獣に対し、一部のメンバーは疑問を抱く。行きつく先はどちらかの滅亡か、それとも共存か。

 この『Human and Beast』の魅力は善と悪との対立ではなく、敵と味方、そしてその狭間で苦悩するドラマだと思います。戦いの意味に疑問を持っていくそれぞれの陣営の有力者、戦いの意義に疑問を持ち始める主人公たち、そして古参に反抗し、急進的な攻撃をする若い世代の魔獣たち‥‥。どこかで止めれば犠牲はなくなるはずなのに、これまでお互いに殺した憎しみから止められない。そして人が家畜を食するように、魔獣も人を食するという自然の摂理も武器を取る理由となり、誰もこの流れを止めることはできませんでした。
 特に中盤以降の南雲恭司を中心とした戦いと和解への葛藤は、この作品の魅力を深めていくことだと思います。詳細は読んでいただくとして、魔獣が人に化して交友できた場合、敵が自分たちと同じ価値観を持ちえ、共に過ごすことができたのならば、この戦いは憎しみではなく悲劇となるのでしょう。戦いの果てに人と魔獣が手にするものは何か、ぜひ両陣営の立場に立って読み解いていってほしい作品です。

 最後に個人的に一番印象深かったキャラクターは藤堂省吾です。彼こそHuman and Beastのタイトルの「and」に立っていた存在だったと思っています。

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