エピローグ

 あれから、十年が経つ。

 二十七歳になったわたしは、いまフランスのパリにいる。

「ミオはこういった風景が好きなのね」

「カトリーヌ……そうだね、この風景を見ると失恋したときのことを思い出すね」

 カトリーヌはわたしの大学時代の仲間で、四年前にパリコレで再会したの。

 わたしは報道カメラマンとして、現在はテレビ局のパリ支局に勤務中。

「カトリーヌ、美女だよね」

「ありがとう、ミオも全然、老けないよね? わたしみたいに」

 そんなことを言ってるカトリーヌは、いまとなってはフランスのなかでも一、二を争う美貌のファッションモデル。

 彼女はお母さんがフランスとイタリアのハーフで、四分の一はイタリアの血も引いている。

「ミオの恋した人は?」

「いとこ、もう結婚して、子どもが生まれたって」

「そうなの!? うちなんか、幼なじみ。日本とのハーフでかっこよかった。でも、もう向こうには恋人がいた。あっちはもう結婚して、子どもが三人」

 カトリーヌは去年の春に結婚しているんだ。

 その幼なじみの双子の弟さん。

 戸籍上ではいとこ……なんだかややこしい関係だけど、幼なじみの人だ。

「レオ、わたしのこと、待ってたみたいでね。もうそのときには……好きだったの。しかも、子どもも来年の夏に生まれるの」

「ほんとに? おめでとう!」

「この子はフランスとイタリア、日本の血を引く子になりそうね。写真をお願いね、生まれたときには」

 そのまま、彼女とは別れた。








 あの十年前に撮ったお祭りでの写真をコンテストに送ったら、見事に最優秀賞をもらえたの!

 そこから、大学で写真のことについての勉強をして、いまはカメラマンとしてパリ支局に来たのは、四年前になる。

 その直前に涼ちゃんと澪莉みおりさんが結婚して、三歳になる娘の凛々子りりこちゃんと二歳になる息子のあおいくんがいる。


 カメラを構え、エッフェル塔の写真を撮った。

 もし、涼ちゃんに片思いしていたあの頃の自分に話すことができれば、こう言うかもしれない。


 ――叶わない恋があっても、夢は叶うよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏に想う 須川  庚 @akatuki12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説