人は恐怖を感じているときほど、『見て』しまう生き物だ

あなたはまず、冒頭で一撃をくらう。

恐怖が頭にこびりついて、離れなくなる。

詳細に詳細を重ね、しつこいほどに生々しく描写された世界は、色や音、温度のみならず湿度まで感じることができる。
主人公が触れたものの感触すらつぶさに捕捉できるだろう。
そうだ。
恐怖を伴った美しさというものは、読む者の感覚を無理矢理鋭敏にする。
目をこじ開けられる。視界を広げられる。普段気付かなかった隅の汚れまで気になるようになる。見たくもないものを見続けてしまう、ずっと、ずぅっと、その虫の小さな口の周りまでもが鮮明になるまで……!

私は知らず知らずのうちに引き込まれ、この蟲の宿に一泊するはめになってしまった。
本当に怖い体験だった。
だがただ怖いだけではなかった。
どこか、懐かしい体験でもあった。

はて、そう言えば、私も子供の頃、このような体験をしたような気がする……。

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