蟲の宿

作者 ふづき詩織

88

33人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

もうね、文章がめちゃくちゃうまい。
丸ごと暗記してお手本にしたいくらい。

私、ホラー小説は大の苦手なんですけど、この作品はあまりにも文章が素晴らし過ぎて大興奮しながら読みました。

この作品には虫などの小動物が登場しますが、「生物の描写」と「生物の生態」と「主人公の不安や恐怖」が実にうまくリンクしています。
単に生き物を登場させるだけではなく、それらが主人公の恐怖心を煽るのに一役買っているのです。

たとえば、ヤモリ。
ただ登場させるのではなく、曇りガラスごしに見えることで主人公の「正体がよくわからないもの」に対する不安感を描いています。
また、このヤモリが逃げていくシーンを描くことで、実際に自分がその様子を目撃したような臨場感があります。

他にもオオミズアオを「人魂」と表現することで子どもらしい感性が出ていたり、檻に囚われた動物が主人公の状況を暗示しているように思えたり、ひとつひとつの描写からただならぬ気配を感じました。

そして、アレ(※ネタバレ防止)の描写がことさらリアル。
どの生き物の描写もリアルで生々しいのですが、アレについては舐めるような観察眼で描かれていて、作者様の文章力の高さをひしひしと感じました。
なぜここまでリアルに描かれているのか……と思いながら読み続け、最後に「なるほど!」と納得しました。

少し読み進めるごとに「この描写すごい!」「この演出すごい!」と興奮しながら読みました。
このような描写ができるのは作者様のセンスもさることながら知識によるところが大きいのではないかと思います。
作者様は虫や生物についてかなりお詳しい方だと感じました。だからこそ、このようなリアリティが出せるのでしょう。
誘蛾灯や三角缶といった言葉も勉強になりました。

ホラーと虫が平気な方には、ぜひお奨めします!
特に虫がお好きな方はかなり楽しめると思います!

★★★ Excellent!!!

 そこかしこに潜んでいる虫の気配。生温かい獣の息づかい。闇の底からなにかが這い上がってくるような不気味な空気。

 美しく生々しい圧倒的な筆致に五感が刺激されて、問答無用で物語のなかに引きずりこまれます。

 非常に高い筆力をお持ちの作者さんですからね。覚悟はしていました。うん。夜に読まなくてよかったです。

 目を閉じればより生々しく感じられるノンフィクションホラー。ぜひ体感してみてください。

★★★ Excellent!!!

あなたはまず、冒頭で一撃をくらう。

恐怖が頭にこびりついて、離れなくなる。

詳細に詳細を重ね、しつこいほどに生々しく描写された世界は、色や音、温度のみならず湿度まで感じることができる。
主人公が触れたものの感触すらつぶさに捕捉できるだろう。
そうだ。
恐怖を伴った美しさというものは、読む者の感覚を無理矢理鋭敏にする。
目をこじ開けられる。視界を広げられる。普段気付かなかった隅の汚れまで気になるようになる。見たくもないものを見続けてしまう、ずっと、ずぅっと、その虫の小さな口の周りまでもが鮮明になるまで……!

私は知らず知らずのうちに引き込まれ、この蟲の宿に一泊するはめになってしまった。
本当に怖い体験だった。
だがただ怖いだけではなかった。
どこか、懐かしい体験でもあった。

はて、そう言えば、私も子供の頃、このような体験をしたような気がする……。

★★ Very Good!!

虫を殺したら同じ死に方をする、から始まる不穏感がこれから何が起きるかと不安にさせてくれます。
所々に描写される虫が独特な夜の不気味さを演出し、更に子供の視点から見ることで児童ならではの恐怖を演出してくれます。

全体的に気味の悪さが上手く書かれた、いい作品でした。

★★★ Excellent!!!

子供の頃、ふと突然に、今まで当たり前だったものに恐怖を覚える。特に夜。
静かな闇を見据える時、思わず服の裾を掴んでしまう。

そういった経験を持つ方は多いかと思いますが、この作品は淡々とした独白のうちに、その幼い不安感をまざまざと蘇らせます。
ひとつひとつの描写、特に生物に焦点を当てることで、リアルな不気味さが巧く演出されています。