子どもの頃死んだ幽霊の君へ。大人になった私たちが渡せる最大級の愛とは?

子どもの頃、病気で死んでしまい、いまは子どものころの姿を保ったままの幽霊である神代くん。生前から両思いで、いまも彼を思い続ける主人公のちとせ。そのふたりの想いを知りながら、ちとせの特別な人間で在り続けようとする別所。
その三人が共同生活をはじめることになってしまって――?
正直最初は「突飛な設定の、すこしドタバタのあるラブコメかしら?」としか、あらすじを読んだときは思わなかったんです。(失敬)ところが、ちがいました。これは極めて真剣な三者三様の「愛」の在り方の話です。しかも精神的な愛のかたちと、肉体的な愛の欲求をもきちんと盛り込んだ、とても真摯な話です。とはいえ、そこにフォーカスを置きすぎることもなく、三人が三人それぞれを思い合ってる姿がとても美しくて、沁みるんです。本来ならもつれにもつれて、下世話な三角関係の話に落とし込んでしまいそうなところを、このものがたりは、さらっととても難しいはずの関係をまとめ上げて読者の目の前に見せてくる。脇を固めるキャラクターもよく、すべての登場人物にとって幸せな結末を迎えられるのかと、情緒をかき乱されるのもまた心地よい。
この共同生活の行く末がどうなるのか。固唾をのんで見守らせていただきます。
お勧めです!

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