三人全員で幸せに。その願いは、永遠の絆となる。

子供のころ、初恋の相手神代くんの死を経験したちとせ。その悲しみは大人になっても癒えることなく、アラサーになった今でも彼のことを想い続けて、現在恋人もなし。

そして、そんなちとせに寄り添う人物が一人。神代くんの親友でもあった別所くん。
彼はちとせの想いをよく理解し、周囲から詮索されるのを避けるためフェイク彼氏をつとめ、同居だってすることになります。
神代くんとは別の意味で、彼もちとせにとっては大切な存在です。

このまま二人で、亡くなった神代くんを想いながらすごしていくのか。しかしそんな二人の前に、昔のままの姿の、神代くんの幽霊が現れました。

男性二人に女性一人。ここに恋愛が絡むとなると三角関係を想像するかもしれませんが、この三人の場合、取り合う関係にはなりません。
それぞれがお互いのことを想い合い、三人で幸せになれる方法を探します。
もちろんそれは、とても難しいこと。なにしろ神代くんも別所くんもちとせのことが好きで、ちとせは一人しかいません。なのに三人で幸せにとなると、普通の方法ではとても無理。だけど例え普通でなくても、常識外れでも、自分たちにとって一番いい選択はなんなのか、どうすればみんなで幸せになれるのか、それぞれが真剣に模索し続けます。

そしてもう一つの話の要は、神代くんが幽霊であること。
幽霊の登場する話は数多くありますが、大抵の場合避けられないのが、成仏するかどうか問題。そして、その時訪れる別れに耐えられるかどうか。
幽霊は成仏した方がいいというのがほとんどのお話における共通認識ですが、大切な人と再び別れることを肯定できるかというと、とても難しい。だけど、何かしらの答えを出さなくては。
この問題は、幽霊ものを書くにあたって避けられないテーマだと思います。

三人の想いと、神代くんの行方。そこにいったいどんな決着がつくのか。
どうか全員幸せになって。読者としても、そう思わずにはいられません。

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