ちょっぴり百合でがっつりディストピアな日常系女学校SF

物語の舞台となるのは、今よりずっと退廃しているちょっと未来の日本。そこではさまざまなろくでもないビジネスが横行しており、本作に登場する「国選花嫁専門大学校」もその一つ。

表向きは若い女性に無償で最新鋭の技術と教育を与えて、上級国民との出会いを与えるというものだが、その実態は、生徒を最新技術の実験材料にして、さらに金持ちに半強制的に身請けさせるという酷いところ。生徒の一人である不破瑞樹に率直に言わせれば、娼婦養成学校であり、生徒たちは皆豚ということになる。本作はそんなろくでもない学校が舞台の学園生活を描くディストピアな日常系作品なのである。

別に将来の見通しが悪くたって、現在のうちからうつむいている必要はない。いつもぼんやりしているクラスメートをからかったり、時には女子同士の下ネタで盛り上がったりするし、瑞樹の語り口もサバサバしていてそこまで辛そうにも見えない。

しかし、一見穏やかに見える生活の中にも、実験の失敗で障害を負った少女や身請け先で酷い目にあって出戻りすることになった少女の悲壮なエピソードや、卒業までに迫るタイムリミットへの不安など不穏な空気が漂っており、おかげで大きな事件は起きないにも関わらずついつい先が気になって読み進めてしまう。ハッピーエンドなど見つかりそうもないこの数奇な学園生活を通して、彼女たちはどのような未来を掴みとるのか?

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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