友達にして最大の理解者にしてライバル。主人公真帆子のひりつくような心情は、小説を書こうと志したことのあるものなら、自分の物語でもあると感じるのではないだろうか。
二人にだけわかる符号のような待合せ場所や、二人の間に漂う濃密な空気には、よい香りが満ちているように思う。それは、作者が紡ぎだす独特の心地よさであり美しさだと感じる。
一歩一歩、夢への道のりを歩んでいく真帆子の心情に寄り添わずにいられない。
彼女の歩む道のりはぜひ作品で出逢ってほしい。文中を漂う数々の香りや味とともに。
作中に登場する舞台の数々もまた美しい。作品と合わせてぜひ訪れてみたくなる。もしかしたらそれも作者の狙いのひとつでは、と、巻末の丁寧な残り香にうっとりと目を細めている。
会社を辞めて、作家を目指す女性主人公の物語。大学時代に、文芸サークルにいた主人公は、そこで様々な体験をする。中でも、彼女との出会いは鮮烈だった。彼女は無駄を一切省いたような女性だったが、芯の強さや文章への情熱を持った人だった。そんな中、小説を書き始めた主人公と、女性は再会し、お互いにまだ「文章を書く人間である」という確認をする。この再開をエネルギーに、主人公はコンテストに向けて動き出す。すると出版社から新進気鋭の作家として、デビューさせたいという話が舞い込む。その出版社の熱血担当編集者と共に、主人公はプレコンテストに応募することになるのだが……。
主人公が赴く場所には、文豪たちの足跡があり、また文学を楽しんでいた学生時代の純粋な過去があり、それを踏んで主人公が彼女へ近づいていく過程が印象的でした。また、「書き手」である方にとっては、とても他人事とは思えないわくわく感と、ドキドキ感が詰まっています。
是非、御一読ください。
冒頭の2話で持っていかれて、夢中で読み進め、気付けば最新話にたどり着いていました。
主人公の「凪帆」(あえてこの呼び方で!)は、交通事故からの半年間の療養生活の後に、一時は諦めた小説家になるという夢を目指し、執筆を再開します。
ライバルであり、心の拠り所でもあるのは、学生時代からの友人。
天才肌の友人に憧れつつ、嫉妬もしつつ、もがきながら、がむしゃらに物語を紡いでいくのですが……この姿、他人事には思えませんよね。
自分にはないセンスや技術をもつ憧れの存在と自分のレベルを比較して落ち込んだ経験は、創作に携わったことのある方なら、一度は体験したことがあると思います。
先を行く友人を追いかけるように頑張る主人公を応援しながら、夢中で読み進めました。
言葉を追うだけですでに心地よい美しい文章や、時折怒涛のごとくやってくる飯テロもさることながら、単なる「頑張る女性の物語」に留まらず、学生時代と、卒業後と、現在という、三つの時間軸を行き来する回想の物語でもあります。
この、行ったり来たりする感覚がとても面白い。
読み手を混乱させずに時間軸を行き来するのは技術がいることだと思うので、ストーリーの面白さだけでなく、作者のお力にも感服です。
すべての方にオススメの物語ですが、特に、物語を書く側の方にはぜひ読んでほしいと思いました。
作家への道、出版ビジネスの裏側を覗くようなワクワクがたまりませんよ!