第3話
二人目の子供は金髪サラサラ、琥珀色の瞳の男の子でした。年齢は8歳から10歳ぐらい?これで全部かな?まさかの子沢山?
名前がわからないので、にっこり微笑んで肩に手を回すだけにしました。(リリアちゃん、名前呼んで。早く呼んで!お願い!)
子供はリリアちゃんを見上げると、嬉しそうに
「お姉様、僕、お姉様が戻るまで待ってました。おやすみなさい、したくって。今日もベッドでご本読んでくれる?」
と、話しかけます。
「ごめんね。ルディ。ちょっとお姉ちゃま疲れちゃった。ご本はまた明日読んであげるのでも良いかしら?」
ルディだ。ルディ君。ルドルフとかかしらね。
がっかりした風のルディ君は、それでも我儘を言わず、姉に向かって頷きました。私にはお願いしないところを見ると、どうやら、お母さんは元々無理、と認識されているようです。良いチャンスなので、私から声をかけて見ました。
「ルディ、お母様がご本を読んであげるのじゃだめ?」
本が読めるかしら?この世界の字が読めるのか、試す価値があります。
ルディ君は文字通り飛び跳ねています。
「お母様が?!お母様がおやすみなさいしてくれるの?じゃあ、すぐ着替えるね。お部屋で待ってるね?」
会話が通じるので、どうにかなるかもしれない思いつつ、万が一本が読めない場合を考えて前世のおとぎ話をいくつか、頭の引き出しから取り出します。
どれがこの世界に合うのかしら。かぐや姫(竹はあるのかな?)桃太郎(桃はあるのかな?)やっぱり西洋風にシンデレラかしら、などなど。
「お母様、お疲れのところ申し訳ございませんが、お願いしてよろしいでしょうか。」
リリアちゃんが気を使ってくれています。
「息子に本を読むぐらいどうってことありませんよ。さっき馬車の中で寝ましたから。でもあなたは疲れたでしょう。ゆっくりおやすみなさい。明日のことは明日考えましょう。ベッドの中でくよくよするのではありませんよ。」
とりあえず慰めておきます。事情がわからないので、大した慰めにはならないでしょうが。
玄関を入ったところで年配の男性(今度こそ執事だと確信!)から声をかけられました。
「奥様、お早いおかえりですね。おやすみ前に何かお召し上がりになりますか?」
「いえ、結構よ。それより、リリアちゃ、リリアを休ませてあげてくださいな。」
「かしこまりました。」
使用人達と家族がそれぞれ散らばっていきます。あとで迷わないよう、部屋の位置をすばやく頭の中でメモりました。
玄関の奥の吹き抜けは、居間になっているようです。正面に家族の絵がかかっています。幸せそうに微笑む私(だと思います。顔色が違いますが)が腰掛けた横に、ルディ君によく似た顔貌の男性が立っています。(ん、なかなかハンサムですね。)母親の膝に手をかけているのはルディ君。父親に寄り添ってたっているのは、リリアちゃんです。数年前に描かれたものでしょうね。リリアちゃんはまだ幼さを残しています。
まあとにかく子供は二人だけで打ち止めでしたね。
幸せを絵に描いたような家族の肖像画を眺め、会えなかった旦那様を見つめた上で、ルディ君の部屋に向かいました。
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