第9話
「この表は、横が年月月日、縦がその日に起きたことを示しております。縦枠には、娘のリリアの行動と、ロヴィーナ嬢の行動が、それぞれ併記されております。また、ローヴィナ嬢がバークレー学園に入学されたのが、1年前ですので、それ以降の出来事のみを記載しております。」
ロヴィーナ嬢が思わず声を挙げた。
「なっ、なんですって!そんなの本当かどうかわからないじゃない!」
それに対する反論は既に用意してあります。
「今からお手元にお配りいたします冊子は、バークレー学園の公式文書をまとめたものでございます。出席表、時間割、学校への生徒からの正式な告発、生徒たちからの証言、先生方からの証言をそれぞれまとめました。証言には、間違いがないよう、本人からの承諾署名もいただいております。」
バートさん、マーティアン先生と、完徹2夜の作品です。ぶっちゃけこれだけでも反論は可能だったのだけれど、プレゼンは、どれだけ度肝を抜かせられるかに掛ってるので、スプレッドシートにさせていただきました。
「以上の書類をわかりやすくまとめさせていただきましたのが、この表でございます。前半の六ヶ月、娘とロヴィーナ嬢が関わりを持ったことはほぼございません。学年も違いますし、教科が重なることもございませんでした。また、ロヴィーナ嬢から娘に対してなんらかの告発がなされたこともございません。ですので、この六ヶ月は、表から外しております。ご確認の必要がございましたら、お手元の書類を閲覧くださいませ。」
「ほう。」
貴族の誰かが思わず声をもらしました。私は、取り出したポインター(ただの棒ですけど)で、黒板をペシペシ叩き始めます。
「問題は、後半六ヶ月です。1月18日に、主人が不慮の事故で亡くなりました。以降、今月夏休みに入るまで、リリアの学園への出席率は、わずか15パーセント。特に1月18日から3月末にかけては、忌引きをいただいておりました。
ロヴィーナ嬢からの、学校への最初の訴えは、3月12日に起きております。同じ学年の女生徒たちに取り囲まれ、男子生徒への振る舞いについて、ひどくなじられたとあります。また、この告発について、後日、5月に入ってからですが、リリア・スタイヴァサントが主導したものであるとの訴えを付け加えていらっしゃいいます。しかしながら、完全欠席で、4月になるまで学園にいなかったリリアには、そのような行為はできませんでした。」
「また、ロヴィーナ嬢は、5月18日、リリア頭から水をかけられた、と告発していらっしゃいます。5月18日、リリアは午前中半日授業を受けて、帰宅しております。ハンプトン領から来客があったためです。(来客の証言をご参照ください)水をかけられたのが夕方3時のお茶の時間とありますので、これもリリアではございません。」
「そんなのデタラメに決まってるじゃない!」
ロヴィーナ嬢からまた声があがりました。
「陛下から公平なお裁きをいただくためにも、反論は重要です。どうぞ、デタラメの部分をご指摘ください。」
ポインターをロヴィーナ嬢に渡してみました。後に引けなくなったのでしょう、ロヴィーナ嬢は、一番目立つところをバンバン叩きました。(ポインターはペシペシが正式よ、お嬢さん)
「ほら、この私が階段から突き落とされたってところ!リリアは学校お休みになってるじゃない!彼女は学園にいたわよ!確認したんだから!」
ですよね。一世一代の芝居なのに、相手のスケジュールを確認しないなんて、杜撰すぎます。
「だ・か・ら!これ、全部、で・た・ら・め!」
ロヴィーナ嬢の形のよい鼻が得意そうに上を向きました。
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