苦悩を抱えた主人公と空の御伽話

不幸な境遇に閉じ込められたお姫様と、そこに手を差し伸べる王子…という誰もが憧れるフォーマットに載せつつも、現代にも通じるようなお姫様の苦悩を急ぐことなく丁寧に積み上げていくことで、近い悩みを持つ人に訴えかけてきます。

その丁寧さと、密やかに設計された作品構造が、終盤に待ち受けるカタルシスに向けた助走距離として機能しており、ついつい主人公に感情移入してしまう。そんな素敵な作品です。

余談ですが、「慈鳥」というのを調べてみると、そういう意味だったんですね。存外に優しい別名があるものだ、と勉強になりました。

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