潮泪

 海はなにも語らない。誰を責めることもなく、許すこともない。
 寄せては返す波間に揺れ、転げて行く寂れた町の運命は、ガラスの欠片がやがて丸くなりちびていき、浜の砂にさえ混じれなくなるのだろう。
 人が絶えた虚ろな家並みに、野良猫や野良犬の鳴き声が響いてようやく、我々は一つの終焉を知る。その時初めて、波打ち際でガラス玉を探しに行く気になるかもしれない。