海はなにも語らない。誰を責めることもなく、許すこともない。 寄せては返す波間に揺れ、転げて行く寂れた町の運命は、ガラスの欠片がやがて丸くなりちびていき、浜の砂にさえ混じれなくなるのだろう。 人が絶えた虚ろな家並みに、野良猫や野良犬の鳴き声が響いてようやく、我々は一つの終焉を知る。その時初めて、波打ち際でガラス玉を探しに行く気になるかもしれない。
とある海辺の町と、ごく普通の“僕”との、長い人生のある部分を切り取って語られたお話です。少年から大人になる変化を、こうも淡々と美しく輪郭を持たせられたな。と読んでいて感じました。これから、盆や正月に帰省する人に読んでほしいです。
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