傍観者というぬるま湯は、本当に自分に正直なのか

小学校を舞台にしていますが、大人の社会の縮図を見るような物語です。そして、自分の考えや思いにどれだけ正直になれるかという個人としての強さを問う物語でもあります。

新しい環境に不安を募らせて転校してきた奈々実に声をかけてくれたのは、ちょっと風変わりな夕希。たった一人のかけがえのない親友になれるはずだったのに、「社会」の圧力が奈々実の心を揺るがします。

「次は自分の番だ」と思った時、その状況と戦えるか、それとも保身に走るか。傍観者というぬるま湯は安全かも知れません。でもそれは自分に正直であることでしょうか。

いじめられっ子の気持ちは沢山は語られないものの、救いを求めるような心情が文章のあちこちからほとばしっています。その中でポロリとこぼれる「友達になりたかった」というセリフには涙が出ます。

小学生らしいささやかな可愛い小道具が物語の中で大きく活きているのも素晴らしいです。
ラストは終わりではなくこれからを思わせます。
二人にはどうか強くあって欲しいと、そう願うばかりです。

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