スパイ小説で色付けされた王道の成長物語

コード・オリヅル~超常現象スパイ組織で楽しいバイト生活!

 本作は能力者(アビリティホルダー)と呼ばれる者たちが存在する世界で、能力者たちの調査と捕獲、管理下に置く「オリヅル」という機関に所属している主人公、甲斐健亮の活躍を描いたものである。
 主人公は、人の「色」が視える異能を持っていた。幼少期に発現し、またその力を隠すようにして過ごしていた彼は、ピンクの色が取り巻いている少女、折賀美弥と出会う。

「そこだけ春が来たかのようにあたたかなピンク色だ」

 彼女に惹かれるままにバイト先に押しかけ、その指が触れ合った時、甲斐は「黒い折り鶴」の映像が視えた。やがて美弥の兄である美仁との再会を通して、「オリヅル」に所属し、様々な機関が狙う美弥を守るべく活躍することになる。

 コメディ、シリアス、アクション、サスペンス、アパートでの生活、様々な要素をこの作品で楽しめることと思うが、特に主人公の甲斐と、彼とコンビを組む美弥の兄、美仁との友人関係が面白い。時には美弥をめぐって喧嘩をし、コンビとして支えながら戦い、そして美弥のケーキをめぐって喧嘩をする‥‥。二人が美弥の保護者として女子高に赴くなど、反目しつつも認め合う彼らの関係がこの物語に読者を引き込む大きな要素となっている。
 そして子供達だけの物語というわけではなく、子供の世話や心配をする能力者、美弥と美仁の親など見守る側の立ち位置とその理由など、多くの背景が丁寧に描写されているのもこの物語を深めている。

 主人公である甲斐はやがてオリヅル以外の多くの能力者とも関わり、能力だけでなく人として成長していく。読者には甲斐の成長物語としても楽しんで読んで欲しい。

 最後に作中で一番共感できた、在る人物の言葉を引用したい。そして読者はこの言葉に至る過程を、甲斐を応援しながら読んで欲しい。

「二人のそばにいるのがきみみたいな人で、本当によかった」

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