天蓋を払う

「ライズがレイゼルに殺された」

衝撃的な冒頭から物語の幕を開ける本作。ライズは主人公リトの部下で、レイゼルはリトの宿敵です。

前作「投げやりな鴉と月色の狼」で、リトはレイゼルに【制約】の魔法をかけました。これはレイゼルをリトたちから遠ざけるための作戦でした。残念ながらその効果が破られて、レイゼルの復讐に遭ったというのが事の顛末。リトは新しく出会った仲間たちの協力を得て、ライズ救出に向かいます。

ただし、注意しましょう。これは単なる復讐譚でも、降りかかる火の粉を払いのける話でもありません。

青年が少年に退行し、長年の淫らな関係を断ち切って、愛しい少女と出会うまでの物語。え、要素が多いって? なら読もう。
寂しがり屋の夢魔は、この物語を通じて何を思うのでしょうか。ひとは、寂しいという気持ちに蓋をしがちです。この物語の主人公も、決して素直な人間ではありませんでした。その彼が、誰かに向けて寂しいと言えるとき、新しい生活の扉は開かれるのです。
いま、心の天井を見上げてください。もし天蓋が閉ざされていると感じるならば、リトと一緒に取っ払ってみませんか。

ちなみに、エレナーゼTRPGシリーズの読者なら、リト会心のぐーぱんちをあの人がどう受けとめるのかが見ものです。