これは、もう、獣医学部へのラブレター
- ★★★ Excellent!!!
ウシの歯が上下で本数が違う? ウマは雌雄で歯の本数が違う? 牛の第一胃はいわゆるミノで、第二胃、第三胃はそれぞれハチノス、センマイ。とろとろの絶品モツ煮にさくさくのモツのから揚げのおいしいお店がー……ほうほう、ふむふむ。え? 解剖学の授業に織り交ぜられるおいしいモツ屋さん情報はなかなかシュールです。
第一話の諏訪先生のお話は洒脱な語り口が耳に(いや、目に)ここちよく、まるで大学で授業中に聞いていた子守唄、ではなく、流麗な名講義のようで、ただもう言葉のうねりに身をゆだねていたくなります。
獣医学部の学生さんたちのお話なので、ごく専門的なトピックスがずっしりとした縦糸となり、それを人間模様のあえかな横糸がつなぎ合わせているのですが、織りあがった物語は実にしなやかです。骨格標本を作るタキさんとの対話だったり、レントゲン画像からカナリちゃん、ユーシンそれにスズが疾患を読み解いたりするのですが、彼らの対話が不思議なほど優しくて、いとおしくて、ときになぜか哀しみの気配をともなう透明感を感じさせます。避けて通れない命との正対を予感させるからでしょうか?
ぐいぐい引き寄せられ、気づいたら獣医学部沼にスネまで浸かろうとしています――まだ四話なのでスネまでですが、いずれ頭までとっぷり浸かり、溺れてしまうと直感しています。ずぶずぶに恋に落ちるその日を楽しみにしています。