欠けていた月が満ちてゆくように近づく、ふたりの距離

登場人物からストーリーの動きまで、月の満ち欠け(朔望)になぞらえて、ふたりの恋愛模様が美しく描かれます。「月がきれい」は手垢のついた表現ですが、作者である彩瀬さんのアプローチは、現代をうまく取り入れて、新しささえ感じられました。
顔の見えないやりとりであっても、互いを気遣い、真摯にあったからこそ、対面を果たしても揺るがない葵と朔也の想いに、憧れを抱かずにはいられません。単なる恋愛だけでなく、ふたりを社会人とした意味を、働きかたを認め合う姿で描いたのもポイントです。

静かに満ちてゆく月のように、ゆっくりと惹き合うふたりの物語。
一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。