主人公が主役の物語です

 言葉遊びになってしまいますが、そう感じてしまいました。

 主人公が主役――同じ意味の単語なのだか当然だと思うかも知れませんが、私はそう感じたのです。

 しかし私は、他には意外にないのだと気付いたのです。

 多彩な登場人物が彩るけれど、だからこそ登場人物ひとり一人は薄くなりがちで、それは主人公でも例外ではない物語巣が多い中、この物語、主人公が物語の主役で居続けている、しっかりとしてバックボーンがある、と感じました。

 主人公は、題名の通り「素行不良」ですが、私は失礼ながら、初見では、素行ではなく人格が悪いと思いました。冒頭から共感できない台詞、行動が多かったです。

 しかし、そこで投げ捨ててしまわなかったのが、物語構成の妙です。

 この物語に於ける異世界転移は理不尽です。理不尽な理由で、理不尽な経緯で転移させられます。しかし冒頭の主人公ならば、それが納得できてしまう。

 その先で待つ展開も、理不尽で、危険です。でも納得できてしまう。

 そして明かされていく過去と、主人公の想いがあり、冒頭の印象が変わります。

 敢えて私は、この物語を主人公の成長の物語だといいません。

 成長ではなく、変化だと思ったからです。

 これも言葉遊びになってしまいますが、主人公は成長するのではなく、持っていた素質を発揮できるように変わっていくのだ、と感じ取ったのです。

 この物語で語られる「更正」という言葉は「誤りを正す」という意味だったと思い出した時、この物語は、この主人公でなければならない、物語の主役は、こうでなければならないと思わされます。