9時間目 修学旅行 5
あの事件から1週間がたった。いよいよ今日は修学旅行だ。
今、2年の生徒と俺たち引率の教員は羽田空港で出国手続きを済ませ、搭乗時間を待っているところだ。
あちこちから話し声がする。皆、出発が待ち切れないようだ。
肝心の花ノ宮はというと、俺と南沢がおじいさんの家まで迎えに行き、集合場所である学校へ一緒に行ったため、何事もなかった。
現在、ひときわ楽しそうにしている班がある。そう、花ノ宮がいる班だ。
「楽しみですわね!」
「沙羅ちゃんはニューヨーク初めて行くの?」
「いいえ、鈴菜さん。実は家族で何度も行っていますの」
「それじゃ、何で?」
南沢が不思議そうに尋ねる。
「『学校の友達』と行く旅行だからですよ、あいらさん」
花ノ宮はにっこり笑って答えた。
ふと、俺は時計を見る。搭乗時間になったようだ。
「じゃあ、搭乗時間になったから移動するぞー!」
俺が呼びかけると、皆とても嬉しそうな顔で引率に続いた。
飛行機に乗り込んだ後も楽しそうな雰囲気は変わらなかった。
自分で買ったガイドブックを広げている班もある。
それは花ノ宮の班も例外ではなく『ニューヨークベストガイド』というガイドブックを広げて楽しそうに話していた。
「楽しみだね、セントラルパーク!」
七草はもう待ち切れない、という感じだ。
「動物園に行くんでしたわよね。セントラルパークの動物園はニューヨーク市内で最初にできた動物園なんですわよ」
「へー、そーなんだ! 沙羅、物知りだね!」
南沢が感心している。俺も知らなかった。
「あ、レンタルボートがあるらしいよ!」
「ボートもいいじゃん! あたし、乗りたい!!」
「沙羅ちゃんもいいかな?」
七草が確認をとる。
「もちろん大歓迎ですわ! あ、ブルックリン・ブリッジを渡った先にバケットが有名なパン屋さんがありますのよ」
「へぇ、行きたいな!」
七草は嬉しそうだ。
「そこで昼食べるのもいんじゃね?」
「あいらちゃん、それすっごくいい! 沙羅ちゃんも、それでいいかな?」
「えぇ、もちろん」
花ノ宮は微笑んだ。
そこで、
『離陸します。シートベルトをお閉めください』
アナウンスと共にシートベルト着用サインがついた。
あちこちでシートベルトを閉める音がする。
いよいよ、出発だ。
俺はまだ、この修学旅行で何が待っているか、知るよしもなかった。
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