10時間目 修学旅行 6

「やっと着いたぁ〜⋯⋯」

 飛行機を降りるなり、南沢はへろへろだ。

「あいらさん、大丈夫ですの?」

「日本とニューヨークの時差が13時間なの忘れてた⋯⋯」

 俺も座りすぎて尻が痛い。

「あいらちゃん、沙羅ちゃん。今日はホテルへの移動だけだから、夕食までしばらく休も?」

「うん、そーさせてもらうわ⋯⋯ホテルってこっからどんくらいあるっけ?」

「確か、歩いてすぐのはずですわ」

「ありがと」

 そこで移動の時間になったので、俺たちは空港を後にした。


「美味しい〜!」

 バイキング会場に七草の幸せそうな声が響く。

「鈴菜、そんなにがっつかなくても逃げないよ〜」

「だって、本当に美味しいんだもん!」

「七草、いい食べっぷりだな!」

「そりゃ教ちゃん、鈴菜が料理覚えた理由が『好きな物を好きなだけ食べたい』だからねー」

「ちょっ、あいらちゃん!」

「ごめんごめん。でもさ、食べながら反論しても説得力ないよ〜?」

「もう!」

 七草は頬を膨らませた。


 次の日。

「それじゃあ、これから班別の自由行動に入る」

「18時までにこのホテルに戻って来る事!

 何かあれば、しおりに書いてある番号に電話する事! それじゃ、解散!」

 解散、と言った途端、皆が四方八方に散った。

「教ちゃん、一緒にまわろ?」

「え、俺いていいのか?」

「うん、皆で飛行機の中で相談したら、鈴菜も沙羅も賛成してくれたから」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「やったー! まずどこ行く?」

「鈴菜が楽しみにしていた、セントラルパークの動物園に行きませんか?」

「いいね、行こ!」

 俺たちはセントラルパークへ向けて、出発した。


「着いた〜! 早く〜!」

「待ってよ、鈴菜!」

 先を歩く七草を南沢が追いかける。

「あたし、チケット買ってくる!」

 七草に追いつくと、南沢は俺たちから金を集め、意気揚々とチケット売り場へ向かった。

「Please give me 4 adult tickets.」

 りゅうちょうな英語だ。

「48 dollar.」

 南沢は48ドルちょうどを渡した。

「買ってきたよー!」

「すごいな、南沢!」

「新垣先生、あいらちゃんのお母さんは外交官なんですよ」

 七草が説明してくれた。

 なるほど、だからあんなに流暢な英語が話せるのか。

「ねぇ、早く!」

「も〜、そんなかさなくても今行くから!」

 七草に急かされ、俺たちは動物園に入った。


 まず、熱帯雨林エリアに行った。

「わ〜!」

 七草が感動したような声を出した。

 そこはジャングルのようで、色とりどりの鳥がいた。

 白と黒のキツネザルや、真っ青なカエル、くじゃくのような羽がある鳩⋯⋯普段見られない動物が見られた。

 次に、Tisch Children's Zooへ行った。

 主にブタやウシ、ヒツジなどの家畜として飼われているような動物が飼育されていて、餌を購入してウシやヒツジたちに与えることのできる「ふれあいコーナー」があった。

 皆、「可愛い〜!」と言って楽しんでいた。

 動物園を出て、レンタルボートに乗ったあと、俺たちはセントラルパークを後にした。

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