2時間目 歓迎会

「つっかれた〜⋯⋯」

 俺は居酒屋のテーブルに突っ伏した。

「新垣くん、慣れない仕事で大変だったでしょ? 今日は楽しんでね」

「ありがとうございます、校長。いやー、今日はこんな歓迎会開いていただいて、ありがとうございます」

 言いつつ、ジョッキをあおる。

「歓迎会を盛大にやるのが、花女うちの伝統なんだよ!」

 突然、聞き覚えのある声がした。

 忘れもしない、この声は――

「え!? 東雲しののめ先輩!?」

「ピンポーン! ようこそ花女へ!」

 東雲先輩――東雲づきは大学の1年上の先輩だ。

 去年、教師になったのは知っていたが、まさか採用されたのが花女だったとは。

「⋯⋯あの、すごく無粋な事なんすけど、先輩そんなに飲んで大丈夫っすか?」

 先輩は俺と話しながら飲んでいる。

 たしか先輩はあまり酒が飲めなかったはずだが⋯⋯。

「え〜、大丈夫らよ〜」

「大丈夫じゃないっすよ!れつ回ってないじゃないすか!」

 やっぱり、先ほどのテンションは酒のせいだったのか。

「新垣くん⋯⋯」

 いきなり先輩が抱きついてきた。

 豊かな胸が当たっている。

「ちょ、先輩!?」

「逃げないでよぉ⋯⋯」

 反射的に離れようとしたが、腕でがっちりロックされて離れられない。

「私の事、嫌いなの⋯⋯?」

 潤んだ目で俺を見上げる。

 美人なのもあいって余計にエロく見える。

「あら、東雲先生と新垣先生、付き合ってるの?」

「校長、違いま⋯⋯」

「そうれすよ〜!」

「ちょ、先輩!」

「あらあら〜」

 必死に否定すればするほど、ドツボにはまる。

 そう悟った俺はもう何も言わなかった。


「それじゃ、ありがとうございました!」

 ぺこりとお辞儀をして、

「ほら、帰るっすよ! 先輩!」

 俺は先輩を引きずるようにして車に載せ、先輩のアパートへ車を走らせた。よく行っていたので、場所は今でも覚えている。

 10分ほど走ると、アパートが見えた。

 横の駐車場に車を入れる。

「先輩、着いたっすよ」

「うぅ〜ん⋯⋯」

 寝てしまっていたらしく、眠そうな声をしている。

 俺は先輩を車から降ろした。

 先輩の部屋は2階だ。部屋まではエレベーターで上がる。

 先輩は酔っぱらっているから、部屋まで送る事にした。

 部屋はエレベーターから少し離れた、角部屋だった。

「それじゃ先輩、おやすみっす」

 踵を返したその時、スーツの袖をくい、と引っ張られた。

「何すか?」

「⋯⋯泊まってってよ」

「え!?」

 訳が分からないまま、部屋に引きずり込まれた。

「そこで寝てて」

 と、ベッドを指さした。

「あ、はい」

 ベッドに入り込むと、疲れからかすぐに眠ってしまった。


 次の日、俺はスマホのアラームで目を覚ました。

 ふと、隣に人の気配を感じた。

 先輩が寝ている。

 そうか、昨日先輩の部屋に泊まったんだった。すっかり忘れていた。

 俺はある事に気がついた。

 のだ。

 慌てて布団をめくり上げる。

 そこには、裸の先輩が眠っていた。

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