3時間目 やっちゃった⋯⋯?
(ちょっと待て、まず状況を整理しよう。
俺は昨日、先輩のアパートに泊まった。
その時、ベッドに入るとすぐに寝てしまった。
つまり、そういう事はしていないはずだ。
だったらなぜ裸の先輩が隣で寝ているのか分からない。
でも俺が寝ている間に先輩がしたという事もあるかもしれない。ダメだ、分からない。)
考えているうちに、そろそろ出ないとまずい時間になったので、俺はカバンに入れているメモ帳のページを1枚ちぎって「先に出ます。泊めていただいてありがとうございました」と書き置きを残し、アパートを後にした。
急げ、もうあまり時間がない。
「はぁ、はぁっ⋯⋯。おはよう、ございます⋯⋯」
何とか間に合った。
「あ、東雲先輩⋯⋯」
泊めていただいてありがとうございました、と言おうとしたところで、妙な事に気がついた。
俺を見る表情が違う。
いつもの先輩じゃない。
なぜか、顔が真っ赤なのだ。
俺は訳が分からないまま、しばらく見つめていた。それに気がつくと、勢いよく顔をそらした。
(もしかして俺、本当にやっちゃった⋯⋯?
そうだとしたらどうしようか。
大事に至っていない事を祈るが、もしそうなってしまったら?
やっぱり責任を取って結婚するしかない。
そうなると俺は、給料も貯金もろくにない状態で先輩といずれ生まれてくる子供を養う事になる。俺にできるのか⋯⋯!?)
そこで、授業開始10分前の予鈴が鳴った。
急げ、授業に遅れる!
全く、今日は走ってばかりだ。
「遅いですわ、先生!」
教室に入った途端、花ノ宮の怒声が飛んできた。
「はぁ、はぁ⋯⋯。皆ごめん、寝坊しちゃったんだ」
「沙羅〜、そういう言い方良くないよ。寝坊しても間に合ったんだからよくね?」
南沢がフォローしてくれた。
「でも⋯⋯!」
「あーはいはい、そこまで!」
俺は南沢と花ノ宮の間に割って入った。
放っておくと授業時間がなくなってしまう。
「気を取り直して、それじゃ、教科書10ページ開いて」
一斉にページをめくる音がする。
「⋯⋯新垣先生!!」
「な、何だ、七草!?」
「どうかしましたか?」
「え?」
「さっきから呼んでも反応がなかったし、心ここにあらずって感じでしたよ」
「あ、あぁ、ごめん⋯⋯」
今朝の事件があってから、全く集中できない。頭はその事でいっぱいだった。
結局、七草に指摘されまくって1時間目は終わった。
やっと生徒が帰った。
「はぁ〜⋯⋯⋯⋯」
俺は椅子に力なくもたれかかった。
一体、何なのだろう。
裸の先輩といい、真っ赤な顔といい⋯⋯。
気になってしかたがない。
やっぱり、真相を確かめよう!
俺はスックと立ち上がり、先輩の席へ向かった。
「せ、先輩。今日空いてますか? 空いてたらメシ食いに行きません?」
「う、うん。空いてるけど⋯⋯。どこ行くの?」
「駅前のファミレスでよければ⋯⋯。」
「分かった。ちょっと待ってて」
先輩は席を立つと、ロッカールームに入った。帰り支度をするのだろう。先輩は5分ほどで出て来た。
「行こっか」
「はい」
俺も職員室を出る先輩に続いた。
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