4時間目 真相

「いらっしゃいませ、2名様でよろしいですか?」

「はい」

「あちらのお席でよろしいですか?」

「はい」

 俺たちは店員が指したボックス席に向かい合って座り、メニューを開いた。

「どうします? 俺このハンバーグステーキとポテトにするっす」

「えー、じゃあ私は⋯⋯カルボナーラにしよっかな。ドリンクバーいる?」

「あ、はい」

「おっけー」

 先輩はベルを押した。

 少しして、店員が来た。

「ご注文お伺いいたします」

「ハンバーグステーキ1つと、カルボナーラ1つ、フライドポテトが1つにドリンクバー2つ」

「ご注文ご確認お願いします。ハンバーグステーキがお1つ、カルボナーラがお1つ、フライドポテトがお1つ、ドリンクバーがお2つでよろしいですか?」

「はい」

「失礼します」

 店員が頭を下げ、厨房へ戻った。


「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

 気まずい。店員がいなくなってから、5分はこのままだ。

 この状況を変えなければ。

「お、俺ドリンクバー行って来るっす」

「あ、あぁ、うん! 行ってらっしゃい!」

 先輩は慌てたように顔を上げた。

 俺は先輩に見送られ、ドリンクバーに向かった。

 ドリンクバーでコーラを選んだ。

(まずい、今日食事に誘ったのは今朝の事を聞くためなのに! このままじゃ気まずいまま終わってしまう!)

「あ、あの、お客様?」

「はい?」

 いきなり店員に声をかけられた。

「コーラ⋯⋯あふれてます」

 俺はドリンクバーのボタンを押しっぱなしだったらしい。

「あーっ! すいません、拭きます!」

「いえいえ、そのままで大丈夫ですよ」

 うぅ、営業スマイルが痛い⋯⋯。

「すいません、ありがとうございます!」

 それだけ言って、俺は立ち去った。


「すいません、お待たせっす」

 やっと席に戻ると、先輩は笑いをこらえていた。

「ぶっ⋯⋯くく⋯⋯」

「何がおかしいんすか」

「だ、だって、ドリンクバーの飲み物あふれさせてる人初めて見たんだもん!」

「笑い事じゃないっすよ! こっちは今朝の事で頭いっぱいだったんすから!」

「え?」

「あ⋯⋯」


 俺のバカ!声でけーよ!周り、皆こっち見てるし!

「あ!!」

 先輩の顔が今朝と同じくらい真っ赤になった。

「あ、あのさ。新垣くんは、私に何もしてないよ」

「じゃあ、何でベッドに裸の先輩がいたんすか?」

「私⋯⋯実はあの時まだちょっと酔ってて、着替えようと服を脱いだら、そのまま寝ちゃったの!!」

 最後の方は一層真っ赤になっていた。

「え、じゃあ今朝顔が赤かったのって⋯⋯」

「それを思い出したから、新垣くんの顔が見られなかったの〜!」

 そういう事か。腑に落ちた。

「良かった〜⋯⋯」

 俺は胸をなでおろした。

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