修学旅行編

5時間目 修学旅行 1

「修学旅行?」

「そ、花女うちは2年生で修学旅行に行くの。言ってなかったっけ?」

 今初めて知ったのだが。

「東雲先輩、初耳っす。花女の修学旅行ってどこ行くんでしたっけ?」

「去年と同じだから、ニューヨークだね」

「さすがお嬢様学校、修学旅行は海外か〜」

「最近は海外に修学旅行に行く学校、多いよ?」

「へ〜。そうなんすか」

「んで、新垣くんとこのクラスでも色々決めといてほしい訳よ」

「何を決めればいいんすか?」

 自分の修学旅行なんてもう何年も前の話だから、記憶が薄れてきている。

「えっと、班分けと自由行動の時に行く場所かな。班分けは生徒の方で自由に決めさせてね」

「要は班ごとに旅行プランを決めろって話っすね」

「そ。あ、もう時間だよ」

「あ! 行って来るっす!」

 俺は職員室を駆け出した。


「おはよう!」

「教ちゃん、うちら来月修学旅行だよね? まだ何も決めてなくない?」

 教室に入るなり、南沢に指摘された。想定内だ。

「皆にお知らせだ」

「1時間目の授業は⋯⋯修学旅行の話し合いだ!」

「マジ!? やった! え、班分けとかもうちらで決めていいの?」

 南沢の目が輝いた。

「あぁ、高校生活最大の行事だからな! 皆 で納得がいくように決めてくれ!」

「やったー! 鈴菜、一緒にまわろ!」

「うん、いいよ」

「意外な組み合わせだな」

 ギャルの南沢と、あまり目立たない七草。

 対を成す存在に見える。

「あ、うちら幼馴染みだから〜」

「へぇ、そうなのか」

 知らなかった。

「新垣先生」

「お、何だ、七草?」

「もうメンバーが決まった班が結構出てきてます。次は何をすればいいですか?」

「次は、自由行動の時に行く場所を決めてくれ」

「分かりました。自由行動の時間はどのくらいありますか?」

「3時間くらいだな」

「分かりました。ありがとうございます」

 七草は南沢のもとへ戻っていった。

「⋯⋯あれ?」

 俺は教室の隅で1人たたずむ花ノ宮を見つけた。

「参加しなくていいのか?」

「わたくしは⋯⋯1人で大丈夫ですわ」

 花ノ宮は寂しそうに呟いた。

「でも⋯⋯」

「新垣先生。放課後、話したい事がありますの。この教室に来ていただけますか?」

「あ、あぁ。分かった」

 良く分からないが、行くしかないようだ。

 俺にはなぜか、花ノ宮の言葉がSOSの言葉に聞こえて仕方がなかった。

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