ふたりの物語は、最初、別の物語だった。

「そのままズバリはかけません。でも、語りたい」で、変な「ひとこと紹介」になってしまいました。

 彼女は読みたくない小説を読む。そして、作中絶対に明確にされず、その作品はバーグさんの批評の中にみるのみなのですが、おそらく「彼」は、別に小説をかきたいわけではない。
 そしてバーグさんの性格というか性分というかレーゾンデートルは「小説を書いている人を支援する」ことなわけです。彼女も彼も表面上は変わらずに、バーグさんに引きずられるように「小説」に変化が生まれる。
 違う方向を向いていた二人の「物語」が、「小説」そのものを接点として、いつの間にか一つの方向へ向かうのです。
 やがて、バーグさんの置かれていた状況も変化します。

 でも、相変わらず、「彼」が小説を書き続けた動機がわからないまま。
 どんな思いで、文章を綴っていたのか。彼の口から語られることはありませんでした。
 いえ「目的」らしきことは語られるんですよ。でも、それは創作とはかけ離れたものです。

 彼はどんな心境で書き続けたのか。「暇つぶし」だったのか、何か科学的なアプローチだったのか、それともバーグさんへの嫌がらせや拷問(笑)だったのか。彼だって、迷ったり推敲したり悩んだりもしたろうに、一切その様子は語られません。
 ああ、そこが何より知りたいのに、わからないようになっています。
 もやもやして、読み返します。

 そして。
 進んだり戻ったりして読み返すと「これかな」と、発見したりします。

 この作者さん、こういう『隠し事』が上手な方です。

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