身近な人が、突然いなくなってしまった。
失われたものがどれほど貴重で失い難いものだったとしても。
取り残された人々は、その喪失と戦い、格闘し、抵抗し、いつか、それを受け入れていく。
ある意味自然な「結末」。
この物語は、そしてここへ至る一連の物語は、そんな「結末」へと至る過程を、少々風変りで、愛情に満ちたやさしい視点で俯瞰してきた。
そうしてようやく、この優しいまなざしの物語は完結しようとしていた。
そのはずだった。
――でも、ここに至って、私は突然気づく。
この物語の主人公は、実は『彼』ではなかったのではないか、と。
この物語は、何よりも大切だった『彼』を、決して失うまいとする『彼女』の、 闘争――レジスタンスの物語だったのではないか、と。
それを我々は『彼』の視線を通じて、見ていただけなのではないか。
そこに思い至って、『彼女』の全てに、初めて得心がいく。
――まさに『どんでん返し』。
当たり前の結末も、想像しうる救いも、常識すらも、木っ端みじんに打ち砕く、『彼女』の最後の『選択』――否。『覚悟』に刮目せよ。
追伸
いつか、で構わないから。
『彼女』のお話を、書いてあげてください。
待ってます。