いかんといわれても。

 平凡(失礼)な社会人が特殊な規則に直面して面食らう。どこの街でもありそうな出来事が起こすおどろおどろしさは読んだ者だけが味わえる恐怖だ。
 市役所の礼儀正しいが事務的な様子、不動産の営業成績が透けて見える対応、いずれも人間臭い。臭い。『くさい』と『におい』が本作では言葉以上に間接的な力を持つ。別に特定の臭いがするのではなく、恐怖から逆説的に臭いを成りたたしめてしまうのだ。
 真相は是非本作で……。

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