第8話 ペニス・パンク

 先に述べたが、ただのボッキを文化と認めない文化人や教条主義者から、彼は継続的にこころない言葉を浴びせかけられ続けている。


 まるで、望まない顔射の矛先を強いられる哀れなAV女優であるかのように――。


 だが、わたしもライターのはしくれとして、教条主義は別として、文化人のいう意見が判らなくないところも確かにあった。



Q.ところで、あなたはただボッキをしているだけだ。



A.その通りである。



Q.あなたが活動を続ける限り、芸術家はみな、あなたのボッキよりも自分の作品や文化活動に市民権がないことを思い知り、民衆やあなたを斡旋する企業に絶望してしまうことになるとは思わないのか?



A.あなたはただボッキを放送しているだけの人間に、何の責任をとらせるつもりだ? 

 要するにあなたのいう芸術家とやらには、わたしのボッキに敵うだけの数字が取れないということだろう?


 数字で競いたいならば、きみたちも勃起すればいいじゃないか? 数字がとれるような魅せ方や作品を作るべきだ。

 芸術がうんぬんとかいうのならば、その世界で頑張ればいいだろう。


 ただ数字の世界には数字の弱肉強食があるだけだ。即ちわたしのボッキを霞ませるような作品と営業力を作ればいいだけではないのか?

 わたしはそういった連中の邪魔など一切しないし、わたしは数字を意識したことすらない。


 わたしのボッキひとつで民衆が操れるというほど民衆を侮るならそれもいい。それならば、あなた方は最初からそれらの民衆を相手にするしか方法がない――と思うべきだ。


 あなた方は、自分たちの活動の不甲斐なさを、わたしのペニスに転嫁しているに過ぎない――とわたしは思う。



――元々、わたしは彼と討論する気はなかったが、ここまで言われて反論できなかったために、単純にむかついてしまった。


 ちょっとばかしペニスをボッキさせられるからって、いい気になりやがって……。


 それならば、なんとか弱点を探り当て、彼の鈴口(亀頭の異称)をこの手で鳴らしてやりたいところではある。


 だが彼の意見は、基本的に「自分をペニスを膨張させているだけの男」というスタンスを取ることで、自己の立場や派閥的な面での弱みがないことを最大限に利用する。


 即ち「ペニス・パンク」(以下ペニパン)……このペニスは王でありながら、無政府的であり一個の野良犬ペニスであった。


 しかしわたしは、諦めなかった。いかなるペニスにも弱点はある。キンタマがついている以上、彼には弱点がある筈だ。

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