第3話 マックス調査決定

 擁護派にとって、かの中村クスコのように特定出来る人間を炎上させることは容易なことであったが、無名の連中による非難はそれ以後も続いた。

 


「この勃起はとんだ紛いものに違いない、きっと何かしらのトリックがある筈だ!」


 と、ニートや社畜、主婦などは競って問題提起し、このようなペニス崇拝を阻止しようとした。

 結果として、このような運動は、ある刺客を送り込むことにつながった。


 即ち我が国が誇る高名なマジシャン――マックス美籐氏に白羽の矢が立ったのである。

 世にいう「マックス調査」である。



 マックス美籐氏のIQは215と推定され、彼は数学界、物理学界からも、その頭脳の矛先を向けてもらいたいとラブコールを送られ続けており、更にはゲイにも一家言あるなどの――いわば濡れた天才である。

 マックス美籐氏に課せられた使命は、「彼」のペニスを細部に至るまで確認し、そのボッキズムに関するトリックを暴き出すことにある。


 マックス美籐はマジックよりも単なる勃起のほうが、文化的に優勢である現状を嘆き、このオファーを快諾したとのこと。

 謂わば彼はアンチ派の最高の切り札として、あの偉大なペニスの前に出陣することになったのである。



 国宝級の頭脳がその勃起を目視するとあって、我が国は職場でも学校でもこの話題で持ちきりとなった。


 放送当日、擁護派もアンチ派も固唾を呑んで見守る中、アンチ派の心理学者や物理学者、医者をはじめ、多くの単なるおっさんまでもが、マックス美籐に倣って勃起の正体を見破ろうとした。

 国民の多くがまるでオリンピックでも閲覧するように、彼のペニスを一斉に目視する事態となったのである。


 これは我が国が誇る大晦日特番に席巻するものであるといえ、テレビ局の視聴率に合わせた表記をすると、68%にも上るものとなるのだという。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る