第5話 ペニスの使命

 彼の取材内容を書くにあたり、実際に行ったQ&A形式も交えて記述していく所存である。早速だが、以下にその文章を書き連ねてみた。



Q.実際のところ、いつ頃から勃ち始めているのか?


A.もう1年近くになる。ただ放送を開始したのは、それから一週間後のことだ。

その表記には西暦のものと同じものを採用している。即ち放送前がB.C.でA.D.が放送後だ。


Q.普段の勃起と何か異なる点はなかったのか?


A.始まりはいつものように勃ち始めただけだ。何の変哲もない、謂わば凡人のものと変わらぬ勃ち上がりだった。

 だが今回の勃起は一日経っても三日経っても、起き上がりが鳴り止まなかったんだ。


Q.主にアンチ派による「バイアグラ中毒なのではないか」という指摘が、ネットの声として挙がっているが?


A.バイアグラなどは使ったことがない。ただ強いて言えば、塩洗いは欠かしていない。


Q.そうすると、勃ち続けるものなのか?


A.そうだ。


Q.なぜだ?


A.清めるということだ。



――この場合の清めるという言葉の意味がよく判らなかったが、とりあえずわたしは話を進めることにした。



Q.病院に行こうとは考えなかったのか?


A.当初はそれも考えた。だがわたしの勃起は、既に非凡のものとなりつつあった。

 そのことを顧みたわたしは、このことが段々と神から与えられた使命なのではないかと思い始めたのだ。


Q.勃起を継続することが、神の使命であるというのか?


A.そうだ。だからそれを医学的に断絶させることは、神の意志に反するものなのではないかと考え至ったのだ。君にも信仰があるだろう?



 自身の勃起の継続が神から与えられた使命であると話すこの男――。

 わたしは男に、新興宗教勢力の教祖に似たものを感じ始めていた。

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