亀の歩調

 読んでいて途中で声を出して笑ってしまった。そもそも、本来ならクイズそのものが成り立たない。互いに相手がボタンを押すまで待っていたら何門出題されても意味がない。制作も、そんなことは百も承知で企画をたてたのだろう。だからあんな相手を出したのだ。主人公は派手好きの洒落者のようだが、まさに主客転倒だ。
 ……しかし。見方を変えるとある種の復讐劇にも思える。真偽不明の噂ながら、かの『13日の金曜日』シリーズでは、制作陣にスクールカーストの最下級者がいて、学生時代のうっぷん晴らしを意識した場面を出したとやらいう。翻って、その三枚目どころか四枚目の芸人の人生はどうだったのだろう。グズだノロマだと罵声の嵐を受けて育ったのかもしれない。主人公を、学生時代に自分を虚仮にするどころか人間として認めなかった連中の代表と捉えていたかもしれない。
 だから、読者によっては違う意味で胸がスカッとするかもしれない。