ふとした出会いのなかで、優しい人の言葉が沁みます。吉田さんの気遣いと人柄が、失恋の悲しみをそっと包んでくれます。もらい泣きしてしまいました。
文体が読んでいて心地良いですね。心理・情景の描写が回りくどくなく適切で丁寧です。青年と中年男の組み合わせで、さわやかに失恋話をまとめるなんて、しかも男の涙で締める、なかなかうまくいかない気がするんですが、読後のすっきり感は見事です。登場人物が主人公一人だとこうはうまくいかなかった気がします。中年男の吉田さんの存在がいいのかな。関連作品も読みましたが、こちらの方が好みでした。もっと難しいでしょうが、元カノさんの物語も読んでみたいですね。
天気と同じで心の中に雨が降っている青年から、彼の気持ちを暗くさせている原因を聞く、まん丸な吉田のおじさん。青年の打ち明け話を聞くだけで、全然アドバイス無いのに青年の気持ちが上向きになっていく様は見ものです!これが年の功ってものなのでしょうか?青年だけでなく、読んでる私の気持ちまで溶きほぐしてくれる吉田のおじさん。……すごいです。
バス停に佇む一人の青年。降りてきた客が自分であることを確認し、明らかに落胆する素ぶりをみせる。日常生活でこのような場面に遭遇したら普通はどうするだろうか?きっとそのまま何も触れずに立ち去るだろう。しかしもし、その客が吉田さんだったら……?そこにドラマが生まれるのです。さてそのドラマ、一体どんな結末が待っているのか、一緒にその「最後の約束」を確認してみませんか?
切なくも、心暖まるお話でした。1話で読めるのでいいですね。