『敵を倒し、愛する者のためだけに祈れ』

 主人公の生き様は、まさにレビュータイトルのまま。

 人類の8割を喪うという世界に於いて、復讐を神に任せておけぬというのならば、自らが神になる他は無い。聖人の果て、神の座へ。人外に身を堕とそうとも、求め、与えられようとする姿には、純粋であり、生命として原始的な、粗野な獣性とも言うべき、暴力的な熱量を持つ愛の形を感じる。

 その主人公のキャラクター性だけでも、この作品を読み進めるに足る理由になるだろう。
 物語の主人公は、弱くてもいい。繊細で、脆弱でも。折れてもいいし、逃げてもいい。
 ただ、正しい者は7度倒れても、また起き上がって欲しい。
 それが、私の願いだ。
 そして、その願いを叶えてくれるのが、鉄機 装撃郎氏の作品でもある。

 さて、ロボットものでありながら、キャラクターだけでレビューを展開するのも野暮というものだろう。

 宗教というオカルティックな無形と、ロボというメカニズムの造形の融合。
 一見、ファンタジー寄りである題材として。この部分は勿論、今日に殊更珍しいものでも無くなった。
 事実、作者の過去2作でもその試みは見て取れ、こちらも是非読了して欲しい作品たちであるが。ここ一連の作品群を見ても、実に、そのスケール感というものを大成させていると思う。

 激しく、厳しく、乾いて、難しい、これをハードと一言で呼べる単語が羨ましくも思えるほどの世界で、ソフトでウェットな愛情の形を、体感して欲しい。

 レビューあれ。

 数多くの読者に、私はそう願うものである。

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