『敵を倒し、愛する者のためだけに祈れ』
- ★★★ Excellent!!!
主人公の生き様は、まさにレビュータイトルのまま。
人類の8割を喪うという世界に於いて、復讐を神に任せておけぬというのならば、自らが神になる他は無い。聖人の果て、神の座へ。人外に身を堕とそうとも、求め、与えられようとする姿には、純粋であり、生命として原始的な、粗野な獣性とも言うべき、暴力的な熱量を持つ愛の形を感じる。
その主人公のキャラクター性だけでも、この作品を読み進めるに足る理由になるだろう。
物語の主人公は、弱くてもいい。繊細で、脆弱でも。折れてもいいし、逃げてもいい。
ただ、正しい者は7度倒れても、また起き上がって欲しい。
それが、私の願いだ。
そして、その願いを叶えてくれるのが、鉄機 装撃郎氏の作品でもある。
さて、ロボットものでありながら、キャラクターだけでレビューを展開するのも野暮というものだろう。
宗教というオカルティックな無形と、ロボというメカニズムの造形の融合。
一見、ファンタジー寄りである題材として。この部分は勿論、今日に殊更珍しいものでも無くなった。
事実、作者の過去2作でもその試みは見て取れ、こちらも是非読了して欲しい作品たちであるが。ここ一連の作品群を見ても、実に、そのスケール感というものを大成させていると思う。
激しく、厳しく、乾いて、難しい、これをハードと一言で呼べる単語が羨ましくも思えるほどの世界で、ソフトでウェットな愛情の形を、体感して欲しい。
レビューあれ。
数多くの読者に、私はそう願うものである。