第3話 わがまま令嬢登場!

太陽の逆光でハッキリとは見えないが、どうやらお出ましのようだ。


「そっちから出てきたんだったら丁度いい、

 俺だって言いたいことがある!」



ムッとした顔でその女が腕を組んで尊大な態度を見せた。


それにしてもそれがチンケに見えるほど体格の影が小さく見える。


段々目が慣れてきたようだ



「その前に...お前、本当に高校一年生かよ?」


「なっ!?」



眉間にシワが寄った、それでも幼い顔で迫力味がない。



「こ、この私が年相応に見えんというのか...?」



かと、思ったら今度はすました顔で

両手を腰に当ててまた偉そうなポーズだ。



「ふん!ま、まあ中学上がりでひよっこのお前には

 私の魅力など分かるまい!」


「中学上がりって...もう言っとくけど春越えて夏近くだぞ?」



ガビーン、という音が聞こえてきそうな少し古いリアクションで驚かれた。



「な、も、もう夏だというのか!?な、ならば!」



そう言うと急に走って屋内の方に行ってしまった。



「お、おい!こっちの話は終わってねえぞ!」



呼び止めようとしたが聞こえなかったのか

中でガチャガチャ何かしているようだ。



数分経つと



「待たせたのう!」


そう言って現れたのは舞妓さんのような白塗りの顔で現れた。



たぶん...日焼け止めだと、思われる......



「お前それなんだよ...金持ちの間で流行ってるジョークか?」


「ち、違うわい!お前と違って博識な私は、


 今こうして話している間にもデリケートな肌が


 紫外線によって焼かれていることを知っているのだ!!」



そう言いつつ汗はダラダラでみっともない。



「...まあ、いいや。それでお前!

 まずそっちの話を聞いてやろうじゃないか!


 その返答と共に俺の言いたい事もぶつけてやるよ!」



この宣戦布告をしながらも尋常でない汗が奴から出ているのが見える。


サングラスを取り出しては着け、


汗をしきりにハンカチで拭いている。



「ほ、ほう~...さ、流石私のみ、見込んだ男だ...」



今度はマスクまで取り出して着け始めた、


汗は更に噴き出す。



「...ちなみに聞くが何で顔を隠し始めたんだ?」


「はん?!そ、そんなの紫外線対策に決まっておろう...!


 案外物覚えが悪いやつだなあ~...はっはっはは...」



明らかにこの梅雨の時期の日差しで出すはずでない発汗量だ。



まあ、それが何だと言うのだ。


奴は言うなれば俺を苦しめた仇敵、掛けてやる情けなど......



「ぜえ、ぜえ...どうした...?言いたいことがあるのではないのか...?」


「お前から先にしろって俺はさっき言ったぞ」


「...あ、あれえ?そうだったかなあ...?」



まるで熱射地獄にいるような疲弊ぶりだ。


日焼け止めの汗落ちで雪だるまの様に溶けかかっている



「はあ、はあ...で、では一つ提案するが...

 それは中で語らせて...もらっても...?」



まったく、と息を吐きながら肩を落とした。



「ふう...分かったよ、お前の部屋まで通してくれ」


「そ、そうしてくれるとた、すか...る...」



そう残してズルズルと自分の部屋に退散していった。


やれやれ、金持ちのお嬢様は相当引きこもり生活が長いとお見受け出来る。



あんなのに仕事を増やされていたかと思うと、


怒りを通り越して呆れる。



そう自分の受けてきた被害をこれでもかと語ってやろう、という


ほとぼりも冷めたところで



豪邸のドアが音を立てて開いた。

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