日常は続くよ、どこまでも
第13話 炎天下でええんか
「あ~あ...こりゃ遅刻するぞ...」
高級車の中で涼んでいる俺たちだが
違反してしまった運転手が流石にすぐには警察から解放されるわけもなく、
刻一刻と時間は過ぎていく
「なぁ?分かってるのか、今の状況?」
広々とした高級車の中ではちんまいお嬢様は十分に寝転がれる。
そのためゲームをして完全におくつろぎモードだ
「ん~?大丈夫なんじゃないか~?」
危機感もあったもんじゃない、
コイツといれば自分も大丈夫な気がしてくるのが
良くない集団心理なのか
ならば己に鞭打つしかあるまい
「よし」
内側から扉を開ける
「ぬわ~何をするのだハルよ~...熱いではないか...」
「ここまでで良いや、俺はもう歩きで行く」
「なっ!?」
ゴロゴロしていたお嬢が飛び起きた
「今、外は30度以上だぞ!?ハルよ、死ぬ気か!」
車の中にあるテレビ画面には確かに外気33度とある。
「33度程度で人が死んでたら今頃死体の山が出来てるだろうが、
ちんたら直射日光を浴び続けなければ大丈夫だ、行くぞ」
成り行きで花山も連れて行く形になった
「ええ~、私やだ~」
「良いから来い!」
花山が駄々をこねている間ずっと日光に照らされてイライラしてきた
「早く、来やがれっ!」
腕をグイっと引っ張ると簡単に引きずり出せた
と、思ったら勢いそのままに幼児のように抱き着いてきた
言ってみれば抱っこの体勢だ。
「ちょ、おもっ!」
「な、今、重いとか言ったな! ladyに失礼だぞ!!」
「わ、悪かったから放せっ!」
何故この女にはこんなにも羞恥心というものがないのか
高校生という時期に同じ年ごろの男に抱き着くなど、
本当にデリカシーも常識もあったもんじゃない
「この暑い中、歩きたくないからこのまま連れてけ~」
「馬鹿言うな!いくらお前が中学生と言われても
疑わしいくらいの体型だからって――」
「あっ!!また失礼なことを~!」
抱き着かれていてキンキンする甲高い声が耳のそばで鳴り響く
「わ、分かったから黙れっ!」
重いは、密着されて熱いは、で
もう汗ぐっしょりになってきた
「ほ、ほら俺の...一般庶民の汗がお前に着いちまうぞ...」
自尊心を捨てた訴えに出た
「そ、そんなもの...これから伴侶、半身となる身の体液など
...何でもないわ!」
お嬢も抱き着く力の浪費で息も絶え絶えしがみついてくる
炎天下の中で男女の荒い息遣い、
字面を見れば何か官能的だが
絵面はあまりにも酷いものだった
遂には俺が根負けして車の中にぶっ倒れた
「お、重い!」
お嬢を下にして
「こらっ!私を下に敷くな!!」
もう病み上がりで元々大して体力もない俺は熱中症なようなもので倒れた、
ということにして学校に行く気力がもう失せてしまった
車内でガンガンに効いている冷房の涼しさに火照った体が冷却され、
疲れもあって意識は簡単に切れてしまった
まだご令嬢の上で
「ね、眠るんじゃない! どいてくれ~!!」
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